問うに落ちず語るに落ちる

寡黙な人物というのは、もちろん性格にもよりますが、意図的にしているのなら、特に付き合いの浅い段階では、何もかもさらけ出して自分を語ることを良しとしないのだろうと思っています。古い価値観の家庭で育った男性で「男は無駄口を叩くな」という教育を受けてきた人は、現代に於いても少なからずいます。
 
海外のことわざ「雄弁は銀・沈黙は金」にもあるように、聡明な人物ほど、聞かれてもいない事まで語るようなことは、私の経験でも実際にありません。
 
いわゆる日本的な接待や飲み会、それに休日のゴルフコンペなどは、表向きは「親睦を図るため」だと思いますが、私が考える本来の目的は「キーマンとなる聡明な人から、いかに情報を引き出すか」ではないかと思っています。
 
女性の場合は、基本的にはおしゃべりな人が多い印象ですが、男性と異なるのは「(男性に対して)秘密にしていることは絶対に言わない」という部分を、どんなにおしゃべりな女性でも必ず持ち合わせていて、核心を突いても答えが出てこないことです。
 
一流のカウンセラーと呼ばれる方々は、男性や女性が普段は語らない(語りたがらない)情報を引き出すことに長けているのですが、共通しているのは「入り口の段階で直接的には聞かない」ということです。
 
人間は不思議なもので、インタビューなど構えた状態で情報を引き出すのは、発言する側からすると「秘密の暴露」という汚点の記憶が強く残るものですが、会話の流れで出す言葉にはそんな後ろめたさが消えてしまい、事によると本人でさえ無意識に言ってしまうということさえあります。
 
一度、流れに乗せてしまうと、その後は直接的な言葉で聞いても、すんなりと情報が引き出せてしまうので、1時間のカウンセリングであれば、最初の30分で骨組みを作って、あとは雪崩式に落としてゆくのが理想の形です。
 
そう言えば、以前「やしきたかじん氏」が女性からモテるコツはと聞かれて「やらせて?」と女性に直接聞くと発言していたが、その上辺だけを他人が真似しても無理な話で、きっとそこに至るまで女性に多くを語らせていたことは想像に難くないが、それに気付かぬ男性はモテる資格がないという深い言葉だったと思うのです。

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